デイサービスをつぶれそうな状態にしないためには(利益の出る経営をするためには)、開業前にきちんと事業計画書を作ることが大事です。ここではその事業計画書の作成のコツについて解説します。また、実際にデイサービスを廃業するときの手順も紹介していきますので、こちらも万が一に備えてご覧ください。
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デイサービス事業所を廃業する手順|経営利益が出ずつぶれそうな事業所
まずは経営利益が十分に出ないなどの理由で、デイサービス事業所を廃業するための手順を紹介していきます。現実にしたくはないことですが念のため確認しておきましょう。
もちろん指定届先の管轄よって多少違ってきますから、きちんと問い合わせなどを行ってから手続きをすることが大事です。
また、ステップ分けをしてはいますが、実際には同時進行すべき作業も色々とあります。
1:管轄の官庁に相談する
デイサービスの廃業を検討しているのであれば、まずは管轄している官庁に相談しましょう。そこで「必要書類」や「廃止までの流れ」などについて教えてもらえるはずです(不明点があれば必ず質問しましょう)。
そして廃業する日程を決めて、廃業に関係する届出書を提出します。
2:関係各所に報告
廃業をする場合は、介護事業所の関係機関に報告しなければなりません。また、取引相手となっている機関などについては、「支払い時期」「取引をやめる時期」などに関しても話を詰めてください。
また、形式上は「廃業の決定→関係各所に報告」ということになりますが、実際にはもちろん「つぶれそうな状態になっている段階」で報告して、各種の相談を始めるべきでしょう。
3:利用者と利用者家族に報告する
デイサービスの利用者とその家族などに対して、デイサービスを廃業することを報告します。
また、介護事業所の廃止手続きをするにあたっては、近隣の介護事業所などに協力をしてもらって、「利用者が引き続きどこかの介護サービスを利用できるようにする」ための調整をする必要があります。
ただ、実際には上手く調整できずに、在宅介護をせざるを得なくなる人が出てくるケースもあります。それから、「他の介護サービスを利用できる状況にある」としても、「これを機に在宅介護に切り換えます」という方もいるかもしれません。
4:スタッフへの報告
デイサービスを廃止する日程が確定したら、スタッフにも報告します。また、「スタッフが転職・就職活動をするための猶予期間」も作りましょう(他に事業を手掛けている場合は紹介する)。
また、廃止日までの勤務の仕方に関する確認や、給与の支払いについても説明しましょう。
もちろん「廃止するので(利益が出ていないので)、給与は払えません」というわけにはいきません。
5:管轄の官庁に書類を提出する|廃止の1か月前が期限
廃業日の1か月前(自治体によって期限は異なります)までに、管轄の官庁に「廃止・休止の届出書」を提出します。「1」で紹介した「相談」の段階で、この書類についても説明されるでしょうからきちんと確認しておきましょう。
また、「現在の利用者が、どの介護事業所に移動するか」を書類にまとめるなどして提出する必要もあります。
6:デイサービス事業所を閉鎖する|閉鎖するだけでは終わりません
デイサービス事業所の廃止が完了してからも、取引先への支払い、スタッフへの支払い、国保連への請求などの作業をすることになります。精神的に非常に辛い時期ではありますが、しっかりとこなしましょう。
備品や不動産などの処分もします。
また、廃止後も「関係書類などの保管をする期間」があるので気を付けてください。
デイサービスの経営利益が出ずつぶれそうな状態になったらM&Aも検討しましょう
デイサービスがつぶれそうな状態になった場合、廃業をせずに「M&A」をするという手段もあります。M&Aとは簡単に言えば、「他企業(第三社)の引き継いでもらう」ということです。
デイサービス事業所の譲渡(売却)をすれば、利用者へのサービスを継続することができますし、スタッフの雇用もそのまま維持することが叶うでしょう。また、廃業にかかるコストを削減することも可能です。
M&Aの手続きは意外と難しくありません。ただ、専門的な処理ですから、プロフェッショナルを頼ることで成約結果が大幅に変化する場合もあります。ですから、デイサービスがつぶれそうな状態になっているのであれば、「介護業界に強いM&Aコンサルタント」などに相談してみることを推奨します。
デイサービスをつぶれそうな状態にしないための事業計画書の書き方|経営利益
デイサービスをつぶれそうな状態にしないためには、つまり「利益が出る経営」をするためには、事前にきちんと事業計画書を作ることが大事です。
もちろん「ルール上必要」「各種手続き(金融機関への融資申請など)をする上で必要」とも言えます。ですがそれ以上に、事業計画書を作る際に行うはずの「経営で利益を出すためのシミュレーション」のほうが大事です。
少し厳しい言い方になりますが「そのようなシミュレーションはできない」という場合は、まだまだ準備や知識が不足しているということになります。当てはまるのであれば、無料の相談会、セミナー、勉強会などに参加したり、専門家に相談したりして、ノウハウを蓄積させていくことをおすすめします。
では、デイサービスの事業計画書の書き方を紹介していきます。
事業の概要の書き方|融資の申し込みなどで使います
事業の概要説明をあまりしなくても、介護保険サービスの指定をしてもらえる可能性もあります。
ですが融資を受けるのであれば、
・デイサービスという事業の概要
・どのようなサービスをするのか
・利益の構造
・経営方針
などをきちんと記載しておくことが大事です。
会社の概要の書き方|法人が行っている事業について書く
法人格を持っていないとデイサービスの開業をすることはできません。そして、事業計画書には「法人としてどのような事業をしているか」も書くことになります。
経営方針(どのように利益が出る見込みなのかなど)の書き方
・事業体制をどのように整えて経営を続けるのか
・どのように事業を広げていくのか(広げていかないならその理由も書くのが好ましい)
などの長期的な目線での経営プランが欠かせません。
また、デイサービスの開業から6か月、1年、2年など、区分けしてそれぞれの時期の展望について書くことも大事です。
ここで重要なのは、あくまで「現実的な計画」を書くことです。介護保険報酬や客単価などを確認すれば、「どれくらい利益が出るか」を予測することはそれほど難しくないはずです。
そして、それにもかかわらず「高すぎる経営目標」を掲げてしまうと、例えば融資の申請をしたときに、「現実が見えていない」と思われて審査で不利になってもおかしくありません。
もちろん経営者自身が、その無謀な経営目標に囚われて適切な行動ができなくなる可能性もあります。
「市場分析と、それに伴う戦略、その戦略の実行方法」の書き方
・地域のデイサービス市場をこのように分析しています
・だからこのような形成戦略で利益を出していきます
・その戦略を実行するためにこのようなことをしていきます
という内容を書きます。少なくとも、「主なターゲット層(例:要介護度3以上限定など)」や「施設のコンセプト(例:食事を存分に楽しめる施設)」などははっきりさせておきましょう。
市場分析においては、主に「エリア内の要介護者の分布」「競合状況」などを確認することになります。
資金計画の書き方|必要資金・資金調達方法など
デイサービスの開業・経営をするにあたって、「いつ、どの程度の資金がかかるのか」を算出して、事業計画書に記載する必要があります。
(ちなみにデイサービスの規模にもよりますが、開業のためには最低でも1000万円はかかると考えてください)
また、「資金調達方法」についても書かなければなりません。もちろん「全額自己資金」というのが一番シンプルですが、実際には「融資」「補助金」「助成金」などを利用するケースが大半のはずです。
これらの金銭的サポートの中には、自分から積極的に調べないと気づきにくいものもありますので気をつけてください。使えるものはなんでも使うべきです。
「不測の事態への対応」の書き方|介護保険制度の変更など
介護保険制度は3年ごとに改正されます。そして規模次第では、「都道府県→市町村」に管轄が変わったり、加算や基本報酬の内容が変化したりする場合もあります。
そして利益を確保するために、デイサービスのサービス内容なども調節せざるを得なくなるケースもあります。
このような不測の事態にどのように対応するかについても、開業前にきちんとシミュレーションをして事業計画書に反映させましょう。
まとめ
デイサービスをつぶれそうな状態にしないためには、「どのような経営をして利益を出していくか」を丁寧にシミュレーションして、それを事業計画書などに落とし込むことが大事です。また、「不測の事態でどう対応するか」も決めておきます。そうでないと何らかの理由でピンチを迎えたときに赤字に陥ることになりかねません。