日本は超高齢化社会であり、本来「社会全体の介護サービスへのニーズ」は高い国です。しかしそれにもかかわらず、経営利益が思うように出ずに、つぶれそうな状態になっているデイサービスが少なくありません。ここでは、そのような苦しい状況になってしまう理由と主な対策方法などを紹介していきます。
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経営利益が出ずつぶれそうなデイサービスが多くなっています
デイサービスをはじめとする介護業界は全体的に厳しい状況にあります。
経営利益が思うように出ずにつぶれそうなデイサービス、実際に倒産・消滅してしまったデイサービスも少なくありません。
「超高齢化社会なのだから、デイサービスへのニーズも強いのでは?」と感じるかもしれませんし確かに「チャンス」と捉えられないこともありません。
ですが現実には、介護業界を志す人、特に介護の経験やノウハウを持った介護職員は、必要量に対して大幅に不足していると言わざるを得ません。
子どもの数も少なくなっていますし、将来的にはさらに深刻な状況になっていくことでしょう。
また、あえてはっきり表現しますが、「給料が安く仕事もハードなのだから、介護職員にはなりたくない」と認識している人もたくさんいます。また、「ニートなどの就職が難しい人が、社会復帰するための手段」と捉えている方もいるでしょう。
デイサービス職員の離職も多い
また、デイサービスなどの介護サービスは国によって人員基準が定められていますし、そもそも介護業界に限らず「労働基準法」は守らなければなりません。
ですが実際には綱渡りのような人員確保が継続しているデイサービスは少なくありませんし、「当然のようなサービス残業」が定着しているところもあります。
(ただ、デイサービスは基本的に日帰りですから、介護業界の中では残業は少ないほうとされています。平均して月10時間ほどです)
これではデイサービススタッフの離職率が高くなってしまうのも当たり前と言えます。
デイサービスの経営利益が出ずつぶれそうな状況になる主な理由
続いてはデイサービスの経営利益が思うように出ず、つぶれそうな状態になってしまう主な理由を紹介していきます。
1:運営方針に問題があるため
一昔前のデイサービスは「開業さえすれば簡単に利益が出る」というものでした。しかし、社会が変化するについてデイサービスを取り巻く状況も変わり、「適切な努力と工夫をしないと利益は出にくい」という状態になりました。
ですから安易にデイサービスの開業をすることは避けて、「収支計画書」などを丁寧に作って経営シミュレーションもして、「これなら確実に利益が出る」という確信を持ててから動き出すべきです。
デイサービスも「ビジネス」ですから利益を追求するためのドライな視点も必要です。
それと同時に、「デイサービスがつぶれれば、スタッフだけでなく、利用者も困り果てる」ということを重々理解しておきましょう。
2:スタッフが少なすぎる|受け入れ人数を制限せざるを得なくなる可能性も
デイサービスを始めるための「人員基準」があります。
しかしその人員基準をぎりぎり満たしているだけでは、業務が上手く回らない可能性もあります。
特に「介護職員」などについては資格不要であり、全くの素人を採用する施設も少なくありません。この場合、そのスタッフの教育が必要になりますから、そこでも労力がかかることになってしまいます。
また、スタッフが少ないと「理由者の受け入れ人数制限」をしなければならなくなり、さらに利益が下がっていくケースもあります。
すると自分の働くデイサービス施設に見切りをつけて、離職してしまうスタッフも出てくるかもしれません。特に優秀な職員であれば、(介護業界は全体的に人材不足ですから)引く手あまたでしょう。
3:定員数が少なすぎる|可能であれば定員数を増やすべきです
小規模デイサービスほど経営利益が出にくくなる傾向にあります。特に10人規模のところがつぶれそうな状態になるケースは多いです。
定員数が少ないほど「利用者一人が抜けたときのダメージ」が大きくなりますし、「緊急受け入れ」などもしにくくなりますから致し方ないことです。
ですから10人規模のデイサービスは、可能であれば15~18人ほどにまで拡大することをおすすめします。他の要素をあまり変えなくても、これだけで経営状態がよくなり、利益がアップするかもしれません。
ただ、もちろん定員数を上げるのであれば、そのぶん利用者を確保しないとさらに経営が苦しくなることでしょう(スタッフも増やさなければなりません)。
また、最初から15~18人で始めると厳しい状態になるかもしれませんから、はじめは10人規模からスタートすることをおすすめします。
そしてデイサービスの規模が、目安として「定員数30人以上」となってくると、また別の難しさが生まれてくる可能性が高いですから、安易に増やしすぎないようにしましょう。
4:業務における無駄が多すぎる
また、デイサービスの業務における無駄が多すぎる施設も少なくありません。
例えば、
・意味のない記録作業
・申し訳程度の朝礼
・無駄な会議
などをしているデイサービスは少なくありません。
スタッフの離職率を下げるためには「給与を上げること」が大事です。しかし、そう簡単に実現できることではないでしょう。ですから、「徹底的に無駄をなくすこと」によって、スタッフの負担を減らすことが重要です。
特に介護業界は、「同じ場所で様々な年齢の人が働く」という環境になりやすいです。
そして率直に言って、「年齢が上の人・立場が上の人が、下の人に無駄なこだわりを押し付けて、業務効率が悪くなっている」というケースは少なくありません。
「年齢・立場が下の人」は、「なぜこんなことを……」と考えますが、立場上それを言うことはできません。
こういった状況にメスを入れることを恐れないでください。
5:サービスの質の低下(もしくはもともと低い)
また、当然ながらサービスの質が低下すれば利用者は離れていきます。
デイサービス施設はたくさんありますから、「ここはダメだから、他を探そう」ということが簡単にできます。
先ほどもお伝えした通り「無駄をなくすこと」は大事ですが、そのせいでサービスの質が犠牲になってはいけません。
6:ターゲットが広すぎて、かえって高齢者が寄り付かなくなっている
例えば、「初心者~上級者まで一つの教室で教える英会話スクール」と、「上級者にのみ教えるスクール」があったとします。利益が出やすいのはもちろん後者ですよね。
デイサービスについても同じことが言えて、特に最近では「要介護度3以上の高齢者だけを受け入れる施設」が多くなってきています。このようにターゲットを絞れば、それに特化したサービスを提供することができますから、結果的に「利用者全体の満足度」が上がります。
他にも「リハビリテーション特化」「食事特化」など、「売り」を作って、利益をアップさせることに成功している施設は少なくありません。
ビジネス経験の薄い人ほど、「ターゲットが広いと、客も増える」と考えがちですが、基本的には全くの間違いと言えます。
デイサービス施設の経営利益が出ずつぶれそうな(つぶれた)場合の動き
実際にデイサービス施設の経営利益が出ずにつぶれそうな状態になったり、実際につぶれてしまったりしたときは、どのような動きをすることになるのでしょうか。
別の運営会社が経営を引き継ぐ場合も
デイサービス施設の運営会社がつぶれたとしても、他の運営会社が運営を引き継ぐケースもあります。この場合、建物は変わりませんし、職員も全く同じになるかもしれません。
ただ、運営会社が変わるのですから、サービスの内容や受け入れ基準なども変更されることでしょう(以前の経営方法で利益が出なかったのですから、変わらなければならないはずです)。
それに伴い離職を余儀なくされるスタッフも出てくるかもしれません。
また、例えば「以前は無料だったサービスが有料になる」などのケースもありますから、利用者にとって厳しくなるかもしれません(黒字を目指すのですからそうなる可能性が高いです)。
もちろんこれによって離れていく利用者もいるかもしれませんが、それ以上に利用者が増えれば良いと言えます(このようなドライな視点を持ちましょう)。
引き継ぐ企業がなく、消滅する可能性もある
もちろん引き継ぐ企業が現れず、完全に閉鎖する可能性もあります。
この場合、そこで働いていた介護スタッフは、他の施設や事業所に移ることになります(もしくは他業界に転職する、など)。
利用者としては他の施設を探すでしょうが、在宅介護に切り換えざるを得ない人も出てくると思われます。
これらのことを踏まえると、やはり「デイサービスの経営利益が出ず閉鎖」というのは最悪の状況であると言えます。なんとしても避けなければなりません。
まとめ
デイサービスの経営利益が出ずにつぶれそうな状態になる主な理由などについてでした。すぐに手を加えやすいのは「業務の無駄を省くこと」ではないでしょうか。固定概念やこだわりにとらわれず、業務全体を見直してみることをおすすめします。余裕が出ればサービス質も上がり、巡り巡って利益もアップするかもしれません。