ここでは「デイサービス等の介護現場における事故対応マニュアル」と題して、事故が起きたときの対応方法などについて解説していきます。また、事故を防ぐためのポイント、事故が発生しやすいシチュエーションなどに関してもお伝えしますので、お年寄りの安全を守るためにもぜひ最後までお読みください。
Contents
デイサービス等の介護現場で多い事故とは?|事故対応マニュアル
転倒・転落・滑落
デイサービスをはじめとする介護施設内において、一番件数が多い事故です(全体の6割以上)。
デイサービススタッフは、お風呂、排泄、移乗時などだけでなく、「ありとあらゆる場面で転倒があり得る」という事を理解しておく必要があります。特に他の高齢者のお世話をしているとき、少し目を離したときなどに起きやすい事故ですから気を付けましょう。
誤嚥・誤飲・むせこみ
こちらは介護施設内における介護事故の約1割を占めます。誤嚥・誤飲・むせこみが起きると、そのまま死亡してしまってもおかしくありません。ですから食事介助においては、食べる速度や飲み込みに関して最大限気を付けてください。
また、お年寄りがむせ込んだときなども、おさまったらすぐに看護師などに確認してもらいましょう。どのような状態になっているか分かりませんから、むせ込みが落ち着いたからといってすぐに食事を再開するべきではありません。
利用者の持ち物の破損や紛失
殊に訪問介護サービスでは、利用者の持ち物や建物が破損したりなくなったりするケースが少なくありません。このタイプの事故は当然人命にかかわるものではありませんが、だからといって軽んじていいものではないと言えます。
もちろんデイサービスにおいても同様の事故が発生する可能性はありますので留意してください。場合によっては賠償などに繋がることもあります。
デイサービス等の介護現場での事故対応マニュアル|具体的な対応方法は?
続いて実際にデイサービス等の現場で事故があった場合の、「事故対応マニュアル」を紹介していきます。
どれだけ留意していても確実に事故を防ぐことはできません。デイサービススタッフとして働く以上は、「いつか必ず事故は起きる。そのとき迅速・的確に対応しなければならない」と心に留めておきましょう。
最初にすべきは利用者への対応|安全確保など
まずは余計なことを考えず、速やかに「当人の安全確保」を行いましょう。
声がけなどによる状態チェック、救命措置、必要に応じて救急や警察などへの連絡も実行します。ここでの対応が遅れると被害が拡大したり、助かるはずの人命が助からなくなったりする恐れがあります。
そして状況が落ち着いたら、利用者に対して誠心誠意謝罪と説明をします。
利用者家族への対応|これも早めに行いましょう
利用者家族にも連絡しましょう。そして、「利用者の状態」「事故が起こった経緯」等の説明をします(もちろん謝罪も)。賠償をするのであれば、その手続きについても伝えます。
連絡が遅れると不信感が強まることになりますから、当人への対応を最優先にしつつ、こちらの連絡もできるだけ早く行いましょう。
「状況を全て整理してから」とは考えず、「今明らかになっていること」を整理して、一次報告をすることが大事です。
職員や関係各所への対応|事後報告書の作成等
当人の安全確認が完了しましたら、デイサービスの責任者スタッフへの状況説明をします。事故の当事者が負傷している等の理由で対応できない場合は、発見者が行います。
「責任者が当事者から話を聞く→続いて目撃者や関係者からも話を聞く」という順番です。いずれにせよ責任者として事故の状況を詳しく把握して、冷静に分析しましょう。
状況の整理が済んだら「事後報告書」を作り、市区町村の保険者に提出します。
報告書には、いつ、誰が、どのようなシチュエーションで事故が発生したのかなど、判明していることを厳密に余さず記録します。
そして必要に応じて、
・利用者のかかりつけ医師
・居宅介護支援事業所
・保険会社(傷害保険や賠償責任保険に入っているときのみ)
などにも連絡して指示に従いましょう。
デイサービスの全スタッフへの周知と注意喚起
するべきことが終わったら、デイサービスの全スタッフへの周知と注意喚起をして、以降同じ事故を絶対に起こさないようにします。また、原因の究明と改善方法を考えることも大切です。
さらに必要に応じて、デイサービスごとにあるはずの「事故対応マニュアル(名称は微妙に異なるかもしれませんが)」の修正・追記などをすることも大事です。
デイサービスで事故が起きた際にしてはいけない対応|事故対応マニュアル
続いてはデイサービス等の介護現場で事故が発生したときに絶対にしてはいけない対応を挙げていきます。もちろん細かく解説していくと際限がありませんので、2点に絞って解説します。
事故の報告をしない|どれほど小さな事故でも必ず報告!
事故が発生してもスタッフ個人で完全に解決できるケースもあります。ですが、事故の規模や大小とは関係なく、絶対に報告しましょう。
事故を起こした、もしくは目撃した場合はすぐに管理者や責任者に報告します。そして、できるだけ早くスタッフ全体に情報を共有します。
そのためにも、職場内における連絡・指示系統、対応方法などを今一度はっきりさせておきましょう。連絡漏れがあってはなりません。
また、繰り返しになりますが、必ず利用者家族と関係各所への報告もしてください。
特に小さな事故であった場合は、利用者家族には「そんなこといちいち報告しなくていいですよ」と鬱陶しがられるかもしれませんが、それでも絶対に伝えましょう。
事故が起きたことを隠す|隠蔽に対するペナルティは重い
施設の評判が悪くなることを避けたり、責任から逃れたりするために事故を隠蔽する人もいますが、これも絶対にあってはならないことです。
隠蔽によって利用者が更なる危険にさらされるかもしれませんし、事故が明るみに出れば、利用者からも利用者家族からも信頼されなくなることでしょう。
また、隠蔽が発覚すると、重いペナルティ(営業停止など)が科せられるケースもあります。
「だからきちんと報告したほうがいい」と考えるのも不健全ですが、隠蔽をせずに、包み隠さず報告したほうが、デイサービス施設やスタッフへのダメージも少なくて済みます。
デイサービス等の介護現場での事故を防ぐポイント|事故対応マニュアル
続いてデイサービスなどにおける事故を防止するためのポイントを紹介します。
仕組みやルールを見直す
「事故が発生しないようなルールや仕組みを作る」ということであり、全てのスタッフが同じルールや仕組みに沿って仕事をすることが重要です。
責任者などが「事故を発生させないように一人一人気を付けましょう」と言うだけでは、何も対策していないのと同じです。
ヒヤリハット報告をする
「ヒヤリハット」とは、「事故は起きなかったものの、ヒヤっとしたりハッとしたりした状況」のことです。ちなみに「重大な事故1回に対して、ヒヤリハットは300回、軽傷事故は29回起きている」と言われています。
日々このヒヤリハットをスタッフから収集して報告・共有し、環境・ルール・仕組みなどを改善していきましょう。そうすることで事故のリスクを下げることができます。
事故の原因の徹底解明をする
「事故が起きた。全ての対応を完了させた」だけで終わりにしてはいけません。
・今回の事故が発生した理由
・どうすれば防ぐことができたか
・どう改善すれば今後同じ事故を防ぐことができるか
を徹底的に検証して、職員全員で共有しましょう。
そして必要に応じてルールや仕組みを変えたり、事故対応マニュアルを加筆修正したりします。
そこまでできてはじめて、「対応が済んだ」と言えます。
デイサービスで事故が起きやすい場面集|事故対応マニュアル
最後に「デイサービス等の介護現場で事故が起きやすい場面」を箇条書きで紹介します。
移動・移乗|ありとあらゆる場面で転倒があり得ます
・ベッドから車椅子への移動
・バスルームやトイレへの移動
・外出先
・玄関での動作時
・立っているとき
・座っているとき(座位からの転倒もあり得る)
・徘徊時
食事時|誤嚥・誤飲・むせ込みだけではありません
・食堂での転倒
・食事での誤飲、誤嚥
・口の中の火傷
・座っている状態からの転倒
・食事の内容を間違える
・薬の内容を間違える
整容時|歯磨きに注意
・歯磨きや口腔ケアで口内を傷つける
・身体や顔の発赤、擦り傷
・転倒
トイレ関係
・方向転換における転倒
・座位からの転倒
・排せつ物を食べてしまう(認知症者に多い)
更衣時|無理な動作に注意
・転倒
・無理な動き方をすることによる負傷
・衣服を原因とする擦り傷
お風呂|転倒が発生しやすい
・脱衣所での転倒
・移動時の転倒
・バスルーム内での転倒
・椅子ごと転倒する
・浴槽内で溺れる
まとめ
ここまでデイサービス等の介護現場における事故対応マニュアルを紹介しました。真っ先に利用者の安全を確保し、続いて利用者家族や関係各所への対応をします。「どれだけ注意していても、いつか必ず事故は発生する」と考えて、事故の際にどのように動くのかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。