デイサービスでは普段のレクリエーションに加えて、季節の行事・イベントを行っているところが多いです。そこでここでは「季節の行事・イベント例」や「実施する上での注意点・ポイント」などについて解説します。もちろん楽しいものではあるのですが、「ただの遊び」にならないような配慮が欠かせません。
Contents
デイサービスのイベント・季節の行事に関する注意点やポイント
機能訓練などに関係しないイベントはできない
デイサービスには、「利用者の心身機能を維持・向上させる」などの目的がありますから、機能訓練などに関係しないイベント・季節の行事はできません。
例えば「利用者本人の運動などを兼ねたお花見」であれば問題ありませんが、「お花見ドライブ(利用者が身体を動かさない)」などはNGです。
通常のサービスを希望する利用者のための人員を確保する
イベント・季節の行事に参加できない、参加したくない人もいることでしょう。
そういった利用者のために、「通常の介護サービス」を提供できるだけの人員を確保しておく必要があります。
イベントや季節の行事は有意義ですが、あくまで「普通のサービスの延長」としてあることを忘れないでください。
特に夏場や冬場、季節の節目などでイベントを行う場合は、普段以上に利用者一人一人の体調に気を配らなければなりません。
利用者本人もイベントに集中すると自身の体調の変化に気づけないかもしれません。
利用者の異変をすぐに察知し、声掛けを行える体制を作りましょう。また、緊急時にどのように対応するかも事前に詳細に決めておく必要があります。
孤立する利用者が出ないようにする
デイサービスの季節の行事やイベントには、
・他の利用者と交流する
・介護スタッフと交流する
・地域住民とのコミュニケーションを取る
などの目的もあります。
そのためにはできる限り全員で楽しむことが大事です。
通常のレクリエーションと比べてもイベントは盛り上がりやすいため、孤立してしまったときの寂しさはかなりのものです。
ですからきちんと目を配り、一人になっている人や楽しめていなさそうな人がいれば、レクリエーションに参加できるように促したり、輪に入るように誘ったりすることが大事です。
イベントや季節の行事の台本を作っておく
台本(人員配置計画なども書いておく)を作
り込んでおくことでスタッフがスムーズに対応できるようになりますし、突発的な事態にも対処しやすくなります。
毎年行うイベントであっても必ず台本を作成しておきましょう。
また、イベントや季節の行事が終わるごとに反省して、台本をブラッシュアップしていくことも大事です。
「全体説明」と「一人を相手に話すとき」で声の大きさ・トーンを変える
ただ、利用者一人一人と個別に会話するときはある程度の声の大きさやトーンを変えないと、威圧感を与えてしまう場合もあるので気をつけましょう。
これらに関しては「この場ではどう話すべきか」を逐一考えていれば、それほど困ることはないはずです。
デイサービスの季節の行事やイベントに期待できる効果・意義
刺激のある体験による脳の活性化
季節の行事やイベントは、普段のレクリエーションを遥かに超える「非日常体験」ですから、脳への刺激になり、脳を活性化させる効果を期待できます。
また、いつも以上にスタッフや他の利用者とコミュニケーションを取ることによっても、脳が元気になることでしょう。
身体機能の維持・向上
季節の行事・イベントに参加してもらうことで、身体機能の維持・向上を図ることができます(そういうイベントである必要があります)。
例えば、イベント用の簡単な装飾物を作ったり、それを飾り付けたりすることにより、指先の機能訓練を行うことができます。
「季節感」を味わう
特に高齢者になると日々の中で「季節感」を味わうことが難しくなり、生活におけるメリハリが失われていく傾向にあります。
ですが、季節の行事やイベントを行うことで、その部分をカバーすることが可能となります。
準備により達成感を味わうことができる
デイサービスの季節の行事・イベントと聞くと、どうしても「スタッフが用意するもの」と感じるでしょうし、もちろんそういった側面も強いです。
ですが、実際には本人ができることは積極的に行ってもらいますから、利用者の皆さんは「役割」を持ち、それを果たす達成感を味わうことができます。
これにより、年齢を重ねるごとに低くなりがちな「自己肯定感」の向上などの効果が期待できます。
デイサービスの季節の行事・イベントの具体例12か月分
それではデイサービスで採用されやすい季節の行事・イベントを12か月分、1か月につき1個ずつ挙げていきます。
1月:新年会|利用者家族との交流も
1月の新年会に利用者の家族を招待して交流したり、ゆったりしてもらったりするのも良いでしょう。
ただ、「お正月に食べるもの・過ごし方」などについては個人差が出やすいですから、あまり限定的なことはせず、できる限り利用者全員が楽しめるように工夫しましょう。
2月:節分|豆まきによる運動効果
「デイサービスのスタッフが鬼の仮装をして、利用者が豆まきをする」というタイプの節分を楽しんでいる施設が多いです。豆まきによる運動効果が期待できます。
また、利用者と一緒に恵方巻を作るのも良いでしょう。
3月:ひな祭り|雛人形作りによる指先の運動など
お雛様がある施設の場合、利用者と協力して飾りつけをする場合もあります。
また、折り紙などを使った雛人形をすれば、指先の運動効果を望めます。
ちなみにひな祭りは女性のための節句ですので、「美容ボランティア」をしている人に依頼して、ネイル、エステ、メイクアップなどの体験をしてもらうのもいいでしょう。
4月:お花見|季節の行事の定番
やはり誰しも桜は好きなのか、デイサービスの季節の行事の中でも非常に人気が高いです。
ただ、基本的に外出するでしょうから、入念に計画を練らなくてはなりません。また、コロナウイルスの影響で外出が難しくなっている側面もあります。
ですから無理に外に出ず、お花見弁当を注文したり、花壇に季節感のある花を植えたりするだけに留めるのもいいでしょう。
5月:端午の節句|無病息災を願う
無病息災を祈るべく菖蒲湯を提供したり、こいのぼりを飾ったりするデイサービス施設が多いです。
6月:キャンドルナイト
6月の夏至は年間で最も日没が遅い日です。それを受け、スローライフや節電の意味でキャンドルナイトなどのイベントをする人が増えました。そして一部のデイサービス施設でもキャンドルイベントを行っているようです。
ただ、季節感は薄いですし、「イベントをする理由」も説明しにくいですし、火を使うリスクもありますから(照明を使えばクリアできることではありますが)、「6月はイベントをしない」という方針にするのもいいでしょう。
7月:七夕|短冊作りによる機能訓練
七夕の短冊作りなどでは細かい作業が多くなりますから、優れた機能訓練効果を期待できます。
ただ、高齢者の中には「七夕=幼稚」と考えている人も意外と多いですから、企画に工夫が必要です。
8月:夏祭り|準備に積極的に参加してもらう
敷地内で縁日風のレクリエーションをしたり、盆踊りをしたりする季節の行事です。
「屋台感」のある食事を提供するのもいいでしょう。
これに限らず多くの季節の行事・イベントに言えることですが、利用者の皆さんにどんどん準備などに協力してもらいましょう。
9月:敬老会|普段以上に高齢者への敬意を払う日
高齢者を敬愛し、その長寿を祝うための行事です。
子どもと接する機会の少ない高齢者のために、近隣の保育園生・幼稚園生を招く場合もあります。
また、「家族懇談会」を兼ねることで、利用者家族に参加してもらっているデイサービス施設も少なくありません。
10月:運動会|機能訓練にうってつけの機会
高齢者であっても、玉入れ、綱引き、リレーバトン渡し(座ったまま)などはできます。
また、利用者による選手宣誓、スタッフによるダンス、応援合戦などでも盛り上がることができます。
11月:紅葉狩り|外出の機会に
4月のお花見とほぼ同じメリット・注意点があります。
ただ、お花見に比べると季節感・人気が薄いですから、こちらも優先順位の高いイベントとは言えないかもしれません。
12月:クリスマス会|餅つきなどを兼ねるのもおすすめ
レクリエーションなどをして、華やかな雰囲気のクリスマスを楽しんでもらいます。
また、「新年の準備」ということで、「餅つき会」をするデイサービス施設も少なくありません(無理のない範囲で利用者にもついてもらいましょう)。
まとめ
デイサービスで行われることが多い季節の行事・イベントについて解説しました。「機能訓練などの一環にする」「安全管理をする」など注意点も多いですが、スタッフ本人が楽しむことで、利用者にとっても楽しめるイベントとなります。そのためにも余裕をもって臨めるよう、事前にきちんと計画を立てることが大事です。